珠洲市には”かぼちゃ芋”と呼ばれるさつまいもがある。昔、奥能登で多く作られていたものなのであろう。肉質がねっとりしており今では干し芋加工している生産者1名の他は余り作られていないようである。
”かぼちゃ芋”と言われた理由は、これも昭和30年頃まで作られていた日本かぼちゃに似てごつごつと盛り上がっていることと内部が赤みがかって柔らかいためと理解している。

”かぼちゃ芋”に代わって作られたのは”金時芋”。粉質性でホクホクとした食感が旨かったのだろうか。田舎人の目珍し物好きが手伝ったのだろうか。今では甘さを売りにした”紅はるか”などが流行っているようである。
甘いさつまいもと言えば安納芋がある。種子島で古くから伝わってきたものという。能登の”かぼちゃ芋”も世に出る価値はないものだろうか。
収穫後、50日ほど納屋に保管していた芋の糖度を調べてみた。

屈折糖度計という器具で”かぼちゃ芋”をすりつぶして絞った汁液を測定した。ブリックスという。貯蔵しておいたさつまいもは水分が少なくなり、汁液が濁ったため値は明確には読み取れないが、”かぼちゃ芋”は”紅はるか”とほぼ同等15%程の糖度であった。
さつまいも3種類を蒸して食べてみた。さつまいもを甘くするには貯蔵方法と加熱方法が大事らしい。加熱は70℃ほどでゆっくりが良いらしいので弱火で蒸してみた。食べて一番甘く感じたのは”紅はるか”、”かぼちゃ芋”はやや劣った。食感は”紅はるか”はねっとり感が強く、次いで”かぼちゃ芋”、”シルクスイート”はやや粉質感があった。
”安納芋”を含め近年、各地域で埋もれていた特色のある固有種が見直され伝統野菜として育成されている。全国区では「京野菜」、石川県内では「加賀野菜」などがある。能登は半島という一方通行の流通事情で古くからの品種が残っていそうなものだが、それがなかなか見当たらない。そういう中で唯一上げられるのに「大浜大豆」がある。現在の品種に比べて成熟期が遅く収穫作業に難があることから作付けが減ったものと思われる。風味が優れる特性を生かし、地域有志により豆腐に加工され道の駅などで販売されている。
”かぼちゃ芋”、形がユニークなことや内部が赤みがかって甘いという特徴を生かし伝統農産物として成長させたいものである。
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